岩上安身は2026年6月5日、日本安全保障フォーラム会長の矢野義昭元陸将補に、インタビュー第2弾を行い、第1弾インタビューに引き続き、「イラン戦争の戦況」について、矢野氏に聞いた。
2026年2月28日に、米国とイスラエルによる一方的な侵略によって始まったイラン戦争では、米退役軍人のダグラス・マクレガー大佐が「米国は開戦2週間で弾切れになる」と指摘していた。
矢野氏は、「これは間違いなく、この通りになってしまいました」「去年6月のフォルドゥなどの地下核関連施設を米軍が爆撃した『12日間戦争』も、そう(弾切れが原因で終了)です」と、明らかにした。
米、イスラエル側の弾切れについて、矢野氏は次のように説明した。
「根本的には、米国の軍需産業の空洞化です。
これは、投機経済で、労せずして巨利を得る(金融資本主義)ということを覚えてしまったので、生産現場の熟練労働者とか技術者を支えていた中間層が没落して、製造業はみんな、中国に移りましたから。
米国内では、とんでもない格差ができると同時に、製造業自体が、もう、造船業もしかり、それから例えば大型のロケットエンジンを作るとか、こういう技術もどんどん失われていきました。(中略)
(製造業の)足腰が非常に弱くなって、それで、ミサイルの増産ができない。
それから、材料とか、部品とか、特にレアメタルがそうですけど、これも、中国とか北東アジアに依存しているということですね」。
矢野氏は、それに対してイランはミサイルを4万5000発保有しており、「すべて国産で、しかも(主要なミサイルは)極超音速です」「命中制度も米国産と同じ、侮れない」と、戦力の差を指摘した。
岩上安身は、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)が3月24日に発表した、「米軍とイスラエル軍のミサイルは、3月から4月中に在庫切れになる」「トマホークの補充には、少なくとも5年かかる」という予測を紹介した。
これに対して矢野氏は、「RUSIはレベルが高く、これは正確だと思います。PAC3が100発しか残っていないというのも、米議会で(答弁が)出ていますし、これはもう、間違いない」と断言し、米・イスラエル側が強い日本のメディアの論調は「完全な戦時プロパガンダ」だと断じた。
続いて矢野氏は、日本のメディアが報じないイスラエルの被害について、詳しく解説した。
イランは、停戦前の3月18日ごろから23日ごろにかけて、5日間にわたって、テルアビブをはじめとしたイスラエル全土の主要基地、主要都市を、極超音速ミサイルなどで破壊した。
米国からイスラエルへの武器供与の最大の拠点であるベングリオン空港には、極超音速ミサイル「ホラムシャハル4」が4発撃ち込まれた。イスラエル側は、アイアンドームではまったく迎撃できず、空港が機能停止して、壊滅的な打撃を受けた。
「しかも、(米国からの武器)受け入れ時間の夜中2時過ぎに、それを狙って撃った」。そう述べた矢野氏は、以下のように解説した。
「(イランが)一番最初に破壊したのは、ハイファとかの港湾なんです。
港湾が、一番大量に、船で武器弾薬が入ってきますから、これをまずやって、それにつながっている道路や鉄道を破壊して、さらにその末端にある補給所も3日目に破壊して、その後、このベングリオン空港を破壊しています。
そういうふうに、段階的に、全面的にロジスティックのシステムを破壊するということを、計画的にやっているんです。
それで、5日間で、全土を停止させて、その後、修復段階で、また攻撃するということをやっている。
ですから、もうイスラエル全土の兵站機能が止まってしまって、数100両のメルカバ戦車の燃料がなくなったり、航空部隊も、F-35の燃料がなくなって、飛べない。そこで、地上に留まっているところを、また攻撃している」。
矢野氏は、米・イスラエル側が、「負けるべくして負けた、ということ」であり、「勝てる挽回の方法は、ないです。核に訴えたって勝てないですから」と断言した。
現役時代に陸上自衛隊で情報分析を担当していた矢野氏は、イラン戦争を始めた米・イスラエルの分析の稚拙さを、以下のように指摘した。
「私は、ソ連・東欧担当で、調査で実務をやっていました。いろんな情報が来たものを、最終的に分析・評価するという立場だったんです。
その時に、日日の事象については、山のように来るんですね。それは、蓄積もあるし、それに目を通して、全体の動きがわかるんですけど、それはあくまで、『現在の状況でどうか』という判断でしかありません。(中略)
『今後、どういう方向に向かうか』ということを知ろうと思ったら、現在の事象だけではなくて、過去の歴史を知らなくてはなりません。
それこそ中東なら、何千年という歴史があります。さらに、人心を動かしていく原動力というのは、宗教とか、文化とか、伝統的価値観というのがあるわけですよね。
そういうものを理解しないと、人心の動向が読めない。そうすると、今後の動きも、見えなくなる。方向が間違ってしまう。
今回の事例なんかは、まさにそうですけど、ハメネイという最高指導者を斬首作戦で殺したということは、シーア派にとっては、殉教者なんですよ。これはもう、シーア派の歴史に残る、偉大な預言者なんですよ。
そういう点で、最高指導者をそういう立場にしてしまうということは、これはもう、シーア派教徒を結束させるということなんです。それは、イラン国内だけじゃなくて、レバノンにも、イラクにも、シリアにも、シーア派はいますからね。そういう人達も含めて、結束させるわけですから。
そうなると、逆効果だということが、なぜわからないのかなと。
ベネズエラと同じように考えてやってしまうというところが、戦略的分析が浅い、ということです。それが、大きな読み間違いです。
イスラエルのモサドも、中東の中であれだけいろんな情報をつかんでいたのに、そこのところの分析は浅い、ということですね。
そこは、やっぱり文化・文明の深さの違いだと思うんです」。






































